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騒音はソプラノ
お題配布元⇒約30の嘘

田村君。ゼルルウ+ミーリニア。

「お前、相変わらず具合悪そうだな。姉さんに一度診てもらった方が良いんじゃないか?」

 うっわ、急に頭痛ぇ。と思って伏せてた顔をあげたら、目の前にいたのは白い髪の男。
 なんだ、世界のアイドル勇者様じゃねぇか。来るなら来ると、時前に連絡してほしい。

「お前がくるまで元気だったんだけどな……」
「元気って……、寝てたじゃないか。それより、入国手続き頼む」
「なんでだよ。勇者様顔パスだろ?」
「こっち」

 ポンポンと、彼が傍らにいた何かを優しく叩く。彼の背中から顔を出しているのは、一人の少女だった。
 俺はI.l.パレードの受付で、「いってらっしゃい」と「おかえり」と「ようこそ」と「出てけ」を言うだけの簡単で面倒臭いお仕事を受け持っている。
 だから俺は受付窓のガラス越しに彼女を見て、本当に街に入れて良い人物なのかどうかを判断しなきゃいけない。
 しかし、こいつは随分とまぁ……。独特な価値観を持った子で御座いますね……。

「……ああ、そっち」

 そっちね、俺の頭痛の原因。

「よ、よろしくお願いします」
「あー、じゃあこの書類に名前とか書いといて。あっちに、テーブルあるからそこで。俺は、ちょっと勇者様と話があるから」

 書類を手渡しながら、言う。彼女は、「はい」って素直に頷いてから、相方がしばし自分の隣から不在になる事に気付いたのか「え!?」と不安げに俺の顔を見上げてきた。
「大丈夫、取らない取らない。つか要らない」って、別にそんな事心配してないって事は知ってるけど冗談めかして言うと、困った風に笑う。可愛いなー、十六歳。
 ミーリニアって名前の女の子がテーブルのほうにてこてこ小走りで行ったのを確認し、勇者様を手招きする。
 そしたら相手が、もう頭の中覗かなくても分かりやすく嫉妬丸出しな表情をしていて、おいおいと俺は呆れた。 
 何、俺があの子の事を微笑ましそうな目で見るだけでも駄目なの? どんだけ独占欲強いんだよ、この方。
 久しぶりに会ったので積もりに積もった話を片しておきたかったのだが、相手の顔になんかそんな気分も失せた。つか、そんな顔されるくらいならさっさとあのお嬢さんの元に帰してやりたいよ。

「大丈夫、取らない取らない。俺人間と恋愛出来ないし」
「!? 誰もそんな事思ってない!」
「はいはい、そうですか」

 さっきあの子に言ったのと同じセリフを吐いたら、力いっぱい否定されちまった。勇者様が嘘吐いても良いもんかね?
 話している最中も、ちょっと離れたところにいるミーリニアが気になって仕方ないらしく、ちらちら横目で見ていて、俺はもう世界は駄目かもしれねぇと思う。
 この人、世界とヒロインの二択を迫られたら確実にヒロインとりそうだよな。現実にそんな展開ねぇけど。つか世界と比べられちゃう村娘って何者だよ。

「何あの子? 幼馴染?」
「あ、ああ。俺と姉さんの幼馴染で、ミーリニア・シキ・チェカットだ」

 世界駄目以前に俺の頭痛もやべぇしなぁ。
 頭痛噛み砕きながら、全部知っているくせに白々しくも問うてみれば、俺の声に我に返った勇者様が慌てて説明してくださる。

「久々にきたと思ったら、女連れとはなぁ」
「違う! いや、女だけれどもお前が言っている意味とは違うだろう!? 違う……よな!?」
「落ち着けよ、冗談冗談。今日はどうしたんだ? 仕事の手伝いか?」
「いや、あいつが一度来てみたいって言うから……」

 一度きてみたいって言われたら、連れてきちゃうのかよ。うち、観光地じゃねぇんだけど。

「見て面白いもんもないんだけど。見れるのも、十三区だけだぜ?」
「俺もそう言ったんだけどな……」
「まぁ、お兄さんと一緒にいれるならどんな場所でも楽しいのか」
「誰がお兄さんだ!」

 お兄さんじゃなかったら何なんだ? 彼氏さんか?
 なんて訊けば多分顔赤くして混乱するんだろうなー、とぼんやりと俺は思う。思うだけで言わない、面倒なので。悪いが今俺は、むしょうに、寝たい。
「あー! まちがえたー!」とか絶望したような声が聞こえた。あの女の子からだ。平気平気、それくらいの間違いさして問題ない。とかそんな視線で相手を見つめてみたところで、俺の思いは相手には伝わらない。

「なんか良い子っぽいなぁ」
「トラブルメーカーだ」
「もう、可愛くて可愛くて仕方ないだろ?」
「べつに……」
「怒ったらやばそうだけどなー」
「? シキは怒っても怖くない」
「ああ、そう……」

 怒るって言っても、お前の思ってるのはそれ甘噛みみたいなもんだろうが。本気で怒らせたら、とんでもない事しでかしそうな人だと思うがね、俺は。
 まぁ、そんな奴を街に入れちまって良いのかって問題もあるけれど、多分大丈夫だろ。彼女の精神安定剤みたいな奴が、今は傍にいてくれるみたいだし。
 
 ミーリニアから書き終わった書類を受け取り、チェック。特に大きな不備はない。変なところにサインが書かれてはいるけれど……。
 OK、入国させちゃいましょ。

「で、まぁ、『入国許可が出たよ!』っていう印みたいなもんを体の目立つどっかに描かなきゃいけねぇんだけど……。デコで良い? 俺のリボン貸してやるから、前髪縛ろうぜ」
「なんでデコ!?」
「お前が見たいだけじゃないのかそれは!?」

 夫婦二人でツッコミ入れてくんなよ。二人で驚くなよ。俺が驚いたわ。
 デコ好きなんだよ。この子、見るからにデコ出し似合いそうな顔してんじゃないか……。
 結局ほっぺに、カナリアを模したマークを描く。「すぐ乾くから触っても良いよ」って言えば、彼女は興味深げに自身の頬に触れていた。絵描きとしては気になるのかもしれんな、この塗料。

「保護者さん、ちゃんとみててやれよ」
「誰が保護者だ!」

 最後に勇者様に念を押して、二人の背中を見送る。
 帰りもあの子ここ通るんだろうなぁ。つか、通らなきゃ印消せないもんなぁ。と、ちょっと憂鬱な気分になってみたり。
 全く、二人して頭の中になんてもん飼ってんだか。悪いけど、俺にはそれは飼い慣らせねぇよ。帰りは別の受付に手続してもらってくれ。
 重くなった頭を伏せて眠りに入ろうとしたら、後ろから部下が「また寝るんですか、ルウ先輩! 仕事してくださいよー! 本当寝るの大好きですね、貴方!」とか言って来たけども、嫁さん以外とも寝ているお前に注意される筋合いはねぇよ! おやすみ!
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