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そして君は語る
「愛しているわ」
台本の上で踊りながら、女は何て事がないように口にする。恐らく感動的なシーンなのだろうけれど、俺は特に何も感じずに、ただ、自分には似合わないセリフだな、と思う。
それはどこにでもありふれた恋愛映画で、それはどこにでもありふれた恋の話で、女はどこにでもいそうなただの女優だった。
俺は、どうしてか一人でそれを見て(暇を持て余していたとはいえ、他にする事もあっただろうに)、終わった後に、嗚呼、エニスを誘えば良かったな、と思った。思ったけれど、彼女の両の瞳を見ながら上手く誘えた自信は、あんまりなかった。
だって、本当にそれは、陳腐な恋愛映画だったのだ。
「愛しているわ」
帰り道。歩きながら真似して呟いてみたけれど、やはり似合わない。
おかしくて、笑いたくなる。笑いたくなるだけで実際は笑えずに、代わりに溜息を一つこぼした。
落ちたそれの行方に、特に興味もない。不思議と時間はたくさんあって、けれど本当は忙しいはずなのに、でも今日は何もやる気が起きない。
どうにももやもやとした思いを抱えながら、足を進める。特に行き先は決まっていない、はずだったのに。
無意識の内に辿り着いたのは、あの話好きの男がいる場所だった。いや、本当は無意識ではないのかもしれない。俺は何を言い訳を並べているのだろう、男らしくない。
落ちた恋の行方に、特に興味はない。なんて知らんぷり出来たら、サイコーだったのにな。
「愛しているわ」
自分がその言葉を言うのは、どうにもおかしくて、似合わないな、と苦笑する。だからといって、別にあいつに言ってほしかったわけではないんだ。
そうじゃなくて、事の顛末はもっとシンプルで簡単だ。
嗚呼、そうさ。意地なんてはらずに、認めよう。俺は、会いたかった。会いたかったんだよ。
つまらない映画を見て、他人の恋の話に感化されたフリをして、偶然を装ってこうやってやってきてまで、お前に会いたかった。会って話をしたかった。かっこわらい。わらえない。
持て余した暇を消す方法なんて、他にもたくさんあるという事など知っている。それなのに、何故面倒臭い方法を選ぼうとするのか。肩をすくめるに他ない。
お前、男の趣味悪すぎるぜ、って鏡を指しながら笑ってやりたいくらいだ。そもそも『男』って時点で救いようなんてなかったかもしれないが、別にいいさ。救いとか、そういうのも、俺にはやっぱり似合わない。
見知った金髪を見つける。あくまで平然を装った表情で、名前を呼ぶ。相手はしっかりと俺の声を拾い上げて、顔を上げる。
次いで開かれる相手の口から、こぼれ出すのはいったいどんな話なのか。
何でも良い。楽しい話でも、悲しい話でも、なんでも。
――お前の話を聞かせてくれ。
台本の上で踊りながら、女は何て事がないように口にする。恐らく感動的なシーンなのだろうけれど、俺は特に何も感じずに、ただ、自分には似合わないセリフだな、と思う。
それはどこにでもありふれた恋愛映画で、それはどこにでもありふれた恋の話で、女はどこにでもいそうなただの女優だった。
俺は、どうしてか一人でそれを見て(暇を持て余していたとはいえ、他にする事もあっただろうに)、終わった後に、嗚呼、エニスを誘えば良かったな、と思った。思ったけれど、彼女の両の瞳を見ながら上手く誘えた自信は、あんまりなかった。
だって、本当にそれは、陳腐な恋愛映画だったのだ。
「愛しているわ」
帰り道。歩きながら真似して呟いてみたけれど、やはり似合わない。
おかしくて、笑いたくなる。笑いたくなるだけで実際は笑えずに、代わりに溜息を一つこぼした。
落ちたそれの行方に、特に興味もない。不思議と時間はたくさんあって、けれど本当は忙しいはずなのに、でも今日は何もやる気が起きない。
どうにももやもやとした思いを抱えながら、足を進める。特に行き先は決まっていない、はずだったのに。
無意識の内に辿り着いたのは、あの話好きの男がいる場所だった。いや、本当は無意識ではないのかもしれない。俺は何を言い訳を並べているのだろう、男らしくない。
落ちた恋の行方に、特に興味はない。なんて知らんぷり出来たら、サイコーだったのにな。
「愛しているわ」
自分がその言葉を言うのは、どうにもおかしくて、似合わないな、と苦笑する。だからといって、別にあいつに言ってほしかったわけではないんだ。
そうじゃなくて、事の顛末はもっとシンプルで簡単だ。
嗚呼、そうさ。意地なんてはらずに、認めよう。俺は、会いたかった。会いたかったんだよ。
つまらない映画を見て、他人の恋の話に感化されたフリをして、偶然を装ってこうやってやってきてまで、お前に会いたかった。会って話をしたかった。かっこわらい。わらえない。
持て余した暇を消す方法なんて、他にもたくさんあるという事など知っている。それなのに、何故面倒臭い方法を選ぼうとするのか。肩をすくめるに他ない。
お前、男の趣味悪すぎるぜ、って鏡を指しながら笑ってやりたいくらいだ。そもそも『男』って時点で救いようなんてなかったかもしれないが、別にいいさ。救いとか、そういうのも、俺にはやっぱり似合わない。
見知った金髪を見つける。あくまで平然を装った表情で、名前を呼ぶ。相手はしっかりと俺の声を拾い上げて、顔を上げる。
次いで開かれる相手の口から、こぼれ出すのはいったいどんな話なのか。
何でも良い。楽しい話でも、悲しい話でも、なんでも。
――お前の話を聞かせてくれ。
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