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魔法使いは嘘を知る
お題配布元⇒約30の嘘

田村君。ワド+ミーリニア。

 グエスティナのテンションがおかシい。
 何ヤら、向かいの席にちッこい奴が三人並んで喋っているのがツボに入ッたらしく(なンでだよ)、さッきから小声で「かわいいかわいい」騒いでいてスげー鬱陶シい。死ネ。百歩譲ってボスはもしかしたらカワイイ事もねー事はねーのかもしんネーけど、それ以外は別にカワイくもない。
「! ヤスちゃんも、もちろん可愛いわよ~」ヤ、いらネーから。そーいうフォローは欲してネーから。ッつーか抱きついてくんじゃねーヨやめろッ!
 オレが白昼堂々と現れた痴女と格闘シている間も、向かいの三人の話題は盛り下がる事を知らネーらしい。ちょッとはオレの心配とかしロよ。オレの純潔の危機に呑気なこッたな。
 グリーンはいつも通りなンか用事でいねーンだけど、何故か今のオレ達の人数は五人である。アイツがいなくても、ハイカードファイブ出来ちゃってんじゃネーか。
 ッていうのも、ボスは最近仲良くなったミーリニアっツー女にご執着な様子で、今日も今日とて彼女の姿を街で見かけるなり「ハイカードレインボー! ハイカードレインボーじゃない!」と大声で叫び通行人どもの注目を集めてレインボーの顔に苦笑いを浮かばセちまッているのにも気付かず、強制的にそいつを喫茶店に連行。今に至ッていルわけだ。
 オレは会話に入るタイミングが掴めネーでオレンジジュースをちびちび飲みながら、痴女の足を蹴ッたりしている。だがさして効果はネーようで腹立つ。

「ハイカードレインボーも良いけど、ハイカードスカイブルーとかも良いわね」
【わーい、俺とお揃ー!ブルー仲間ー!o(´▽`*o)】
「あ、ハイカードスカイのほうが語呂が良いわね」
【それだと俺とお揃じゃないじゃん・・(・д・`●)】
「ミーリニアは何か好きなものとかある? この際、色じゃなくても良いわ」
「からあげ!」
「それは……! ハイカードレモンの加入を心待ちにしたくなるわね!」
「あ、あと、うさぎとか」
【 ̄(・x・) ̄】
「!?」
【ハイカードラビットだうさ! ̄(・x・) ̄】

 いや、入るタイミングが掴めーっていうより、入っていけるわけネーだロ、こんな阿呆な会話。
「あいつら意味不明だヨな」痴女だろうがもうオレにはこいつしかいネーわ、と思って隣の女に小声言ッたら、女も真面目な顔をして頷いた。

「そうよね~。個人的には、ハイカードペイントを推したいわ~」

 コイツもダメだッたわ。オレ一人アウェーだわ。

「そういえば、レインボーは風景師だったわね」

 あー、ンな事を前確か言ッてたな。今のピンクの言葉でボスはその事を思い出シたらシく、ちび二人に挟まれて座っているちびに話しかけている(結局こいつの呼び名はレインボーに収まッたらしい)
 こくこくと頷くレインボーにボスの機嫌は更に良くなり、今までどンなもンを描イたのかを訊ーてイる。どこぞの事務所の壁に何々を描いただの、ある路にドレドレを描いただの、丁寧に答エるチビ娘。思ッた以上に、このちッこいのは働きもンらシい。ッつーかそーいえばコイツいくつヨ? 子供じゃネーの?
 疑問に思ッたオレがまじまじと相手の顔を見つめテいたら、聞いた事のある村の名前がその唇から出てきた。グエスティナもそれに気付いたらシく、パッと顔を輝かセている。

「あら、その村ってここから近いわよね~」
「あ、はい。ちょっと歩けば……」

 ココから歩いて一時間もかからネー場所にある村だ。なンでもこの女は、その村のチャペルの内装を好き勝手に塗りたくッたらシい。オレはそッかそッかふーんッて感じでその話を聞イてたンだが、我らがボスは食イついた。「近いなら今から行きましょうよ! 見てみたいわ!」ンな暇オレにはねーヨ!
 グエスティナもボスの言葉に賛同シ、レインボーも「嬉しいです。気に入ってくださると良いなぁ」とか喜んでいヤがる。そこは照れろヨ! 「は、恥ずかしいのでだめですっ」とか言えヨ! 普段大人シいくせに、自分の作品を見せる時だけ堂々となるとか…………ご立派じゃネーか!

「世界平和そッちのけでンな事してて良いんスかぁ、ボスゥ! こーシている間にも、世界は闇に包まれていッちまうんスよ!」
「あら、ヤス。面倒臭いって思ってるわね?」
「ぐぐぐ、さすがボス。オレっちについて、よく知り尽くしておられる……!」

 何が悲シくて、興味があるわけでもネー風景師の作品を見にいかなきャいけネーんだ。
 言ッとくが、オレはそういうのに全く明るくネーからな! この女が、「えへへ、ヤスさん、どうですか?」とか訊いてきやがッても気の利いた事なンて何一つ言えネーからな! そして、コイツはオレの冷てぇ返答に傷つき、ボスはオレに失望スる。そンな未来が今、見えた気がした……。いや、最近は能力使うの控えてるから見えネーけど……。チクショー! 能力禁なンかやめて使いてー! 奇跡に頼りてーわ! 頼ッて粋なコメント残シてーわ! ボスに「あら、ヤスったら粋ね!」とか言われてみてーわ!
 だが、こうやッてテンションの上がった女性陣を止めンのは至難のわざだ。オレっち一人じゃどうにもならネー。癪だが、今頼れるのはこの場にいる唯一の同性であり、オレと同じくこーいう事を面倒臭がるタイプのチビ助しかいネー。どーするヨ、ブルー。
 オレの気持ちが届いたノか、子供みたいな顔の青年は次の瞬間にあッさりと宙に言葉を投げた。

【えー、いいじゃん。行こうよ。俺も見たい】

 寝返ンなよッ!

「テメェは別に絵とかどーでもイー癖にッ」
【え!?(;゜ロ゜)ヤスは俺を誤解している!俺は芸術とか大好きだよ!魔術も芸術みたいなもんだからね!ヾ(≧v≦*)ノシ】『術』ッて字シか合ってねェだろうが!
「コイツわけ分かンねーだろ? お前も今後は無視してイーから」
「!? いえいえ! 無視しません! 構います!」
【構われますよ!】

 レインボーはぬいぐるみにスるみてーにぎゅむッとブルーを抱きシめてくれちゃッてるけド、それそンな抱きしめ方していーほどカワイイもんじゃネーから、ッつーかただのおっさんだから。お前がンな風に甘やかすせいで、このおっさん確実に調子乗ッちまッたじャねーか(ボスも真似して抱き着くもンだから、一応一番弟子であるオレっち的には少しばかりイラッときた。あくまで一番弟子としてイラッとしただけで、他意はネーよッ!)
 で、まァいくらオレにやる気がなくとも、四対一じゃ分が悪スぎる。それに、レインボーを泣かせようもンならせッかくここまで積み上げてきたボスからのオレへの評価が一気に崩壊する可能性もある。

「しゃーネーな、好きにシろよ。オレっちはどこまでもボスにお供するッスよ!」
「ありがとうございます!」
「言ッとくけどテメーのためじゃネーからな! ボスが行きたいッつーから行くだけだかンな!」

「ヤスさんにも、いつか見てほしいなぁって思ってたんです」ハァ!? な、何嬉しそうにえへへって笑ッてんだテメー! オレを惑わすのもいーかげんにシろッ!

 ◆

 ……グエスティナのテンションがおかシい。
 街を出てよーやく静かになッたと思ッたのに、数分ともたなかッたじゃネーか! そろそろ他人のフリすッぞ!?
「だって、ヤスちゃん。聞いた? 聞いた?」知らネーよ聞きたくネーよ! テンション高ぇからッてオレの右腕に腕を絡めンのが許されッとでも思ッたら大間違いだかんなさッさと放せ痴女!
 ボスもグエスティナの異様なテンションに訝しめに眉をひそめ、真剣な声音でオレに相談をしてくる。「ねぇ、ヤス」ボスは、たとえ変態だとしても仲間の事は思いやる人なのだ。

「『ミーリニアとワドが仲良くなって良かったわ。今も二人で手を繋いでいるし』ってアタシがグエスティナに言ってから、なんだか様子がおかしいのよ。何が原因だと思う?」
「それが原因ッスよ!」
「なるほど! つまり、グエスティナも手を繋ぎたいのね!」

 前言撤回だわ! 全然思いやれてネーわこの人! 仲間であるオレっちの気持ちを全く汲んでくれてネーわ!
 ッつーか、前から薄々思ッていたけド、ピンクってショタコンでロリコ……ヤ、深く考えないでおこう。ボスと手を繋いで幸せソーな顔してやがるピンクから、とりあえずオレっちは顔を逸らシた。
 青ざめるオレっちに、何かが差し出サれたのはその直後だ。一本の白い手。ボスの手だ。彼女の真意に悲シきかな気付いてシまッた聡い一番弟子の顔が、更に青くなッちまッたのは言うまでもネー事だろう。

「ヤスも、ほら!」
「いいッスいいッス! オレは間に合ってるッスから!」
「両手とも空のくせに何言ってるのよ!」

 他に人いないけど、恥ずかシいもンは恥ずかシいだろうが! 羞恥心ッてもンがテメェらにはねぇのか!

「もしかして、ヤスってば照れてるの? そんな必要なんて全然ないわよ! だって、手を繋ぐ事は別に恥ずかしい事じゃないもの!」
「ヒイイ! ボスがオレっちの事を知り尽くしスぎていて、ついには心の声にも返事を返せるようになッてシまッた!」
「落ち着きなさい! 多分偶然よ!」
「手なら、あのチビ達と繋ぎャ良いじゃネーっスか!」

 ボスはいつもみてーに得意げにふふんと笑ッて、「アタシはミーリニアを買ってるのよ!」とかわけ分かンねー事を言い始めた。
 買うッつーのは別に金払ッて自分の所有物にシたとかそういうンじゃなくて、恐らく実力を認めてるとかそーゆー意味だロう。どッちにしろイミフ。

「今はアタシ達が邪魔をしてはいけないのよ。ワドは、一度ミーリニアみたいな子と話をして元気になったほうが良いわ」

 困惑しているオレっちにボスは丁寧に説明してくれヨーとしてるンだけど、やッぱりイミフだわ。ンでアイツと話すとブルーが元気になるンだよ。ボスはあいつの事を買ッてるっつーか、買いかぶッてンじゃね?
 今見てみたラ、何故かチビ二人は【おねーちゃん!】「弟!」とか言いながら抱き合ッていた。オレが目を離した隙に、テメーらに何があッたんだ……。

 ◆

「あ、つきましたよ。この村です」

 レインボーは笑ッて、前を指差した。小セー村が、その指の先にはある。
 よーやく着いた目的地にオレはホッとして、ちッさい女の案内に従い村の中を歩いて行く。
 村人の視線が、妙に気になッた。稀有なもンでも見るかのよーな視線。最初はオレ達に向けられたもンかと思ッたけど、どうにもこのチビ娘に向けられてるらシい。
 チビ娘は気にシた風もなく、ズンズンと前を歩いていく。慣れてンな、こりゃ。確かにコイツの目は珍しーし、差別スる奴もいンだロう。
 だが、嫌われてンのに仕事を頼まれるッて事は、コイツの絵がよッぽどスゲーって事なんじゃネーだろうか。勝手にハードル上がッちまってるけど、ダイジョブか? 悪ぃけど、オレっちはテメーみたいな小娘にはお世辞とか言えネーからな。

 とか考えてたンだが、別にその必要はなかッたみてーだ。管理者に許可とッて入らせてもらッた例のチャペル。外観はフツウだッたけれど、中はオレの想像してたのとはかけ離れた姿だッた。
 好き勝手する許可を貰ったから、好き勝手した。とは言ッてやがッたけど、ココまでしていーもンなのかね?
 けれど、それは確かに、お世辞の必要がネーくらいには、美しかッたのだ。

 小さな村の、小さなウェディングチャペル。
 天井も、床も、壁も。
 一面の、青色。
 そこには確かに、『空』が在ッた。

 ッても、本物なわけがネー。教会中に、空の絵が描かれていただけダ。隅から隅のほうまで、余ス事なく。

「スゲーな。綺麗じャん。空飛ンでるみてー」

 オレが特別に褒めてやッと、レインボーは頭をかいてテレテレとした。

「空の上で結婚式を挙げられたら、素敵かなーとか思いまして……」

 へー、芸術家の考える事はよく分からン。どこをどーシたらそーいう発想になるンだ。地上で挙げりゃ良いだろ、ンなモン。

「綺麗ね~。ヤスちゃんもここでボスちゃんと式を挙げれば良いわよ~」
「オイ、ピンク。何言ッてんだピンク。自分が何言ッてンのか把握してンのか、オイ、ピンク。脳までピンクかテメェ……」
「名誉ヒーロー賞の授与式……! ふふ、ふふふふふっ!」

 ボスがなんか違う方向に妄想シている。そういう式は、教会ではヤんネーだロ。ッつーかここは結婚式用のウェディングチャペルだ。
 ウチの事務所の女どもがキャッキャ楽しソうに話し始めたのを横目で見ヤりながら、 なンかさッきから大人シいブルーが気味悪ぃンで「テメーもなンか言えよ。気に入らなかッたならオレのオブラート特別に貸してやんヨ」ッつッたら、オレの言葉を聞いてンのか聞いてネーのか、

【やはり魔術は芸術だった】

 と、妙に真面目な顔シて奴は一人納得していた。「だからソれ、意味分かんねーッて」ドン引いたオレの横で、レインボーはパッと顔を輝かセて、

「はい!」

 とかまさかの同意。しかも満面の笑ミときた。どーゆー事なんだヨ。
 まァ、魔術云々とかはどーでもいーとシて、コイツの作品とヤらも存外悪くネーじゃねぇか? ッて、何をオレは思ッてンだ。らしくもネー。
 でも、ニッコニコ笑ッてるレインボーと絵を見比べて、ちょッとくらいならコイツの事を『買って』やッてもイーかもしンねーッて思えてきた。
 ……オレのテンションも、ピンクに負けず劣らずおかシい。

 ◆ ◆

【はぐれないように手を繋ごう!( ^^)人(^^ ) 】
「はい!」
【おおう、OKされる可能性を考えてなかった・・・。ミリミリ大丈夫?誘拐とかされないでね(´・ω・`;) 】
「さすがに、そんなに誰にでもついていくわけじゃ…………ありますね!」
【どうしようこの子不安だよ!∑(゚□゚;)】
「安心するために、やっぱり手を繋ぎましょう。……村にわたしより背の低い子いなかったので、なんだか新鮮です」
【それは何?つまり俺は、この小ささを活かしてミリミリに甘えて良いって事?今、そのお許しが出たの?】
「! 甘えても良いのよ!」
【ミーリニアおねーちゃーん!(*ノ><)ノ】
「弟ー! ん、弟?」
【弟でも従兄弟でも義弟でもなんでもいいよ!・・Σハッ!ヤスに変な目で見られた!( ̄ロ ̄lll)】
「し、失礼いたしました! ……ヤスさん、ご機嫌斜めですよね。無理言って付き合わせちゃった」
【え!もっと無理言っちゃえよ!ヤスほど利用しがいのある奴はいないよ!】
「なぬ!?」
【冗談はともかくとして、あいつはただ無自覚に照れ臭がってるだけだから気にしないで良いよ。ミリミリが可愛しい、ボスも可愛いしでどっちにも嫉妬しちゃってんだよ(〃^∇^)女の子に慣れてない奴はこれだから困るね(* ̄ー ̄*)】
「んー? わたしがボスさん取っちゃった的な?」
【ヤスが一人で混乱してるだけだよ。あいつの顔があなたと話してて赤くなるのは、怒ってるんじゃなくて照れてるだけだからね。笑ってくれて良いのよ(>w<*)】
「いえ。……似てる人知ってます。すぐ照れちゃうの。でも、時々ビックリする事を平然とした顔でする。変な人!」
【あらまぁ。なんだか微笑ましいね(´ー`*)】
「ヤスさんに嫌われてるなら、別にそのままでも良いんです。慣れてるし、相手がどう思っていようがわたしはヤスさんの事気に入っているし。でも、嫌いな人にしつこくされると嫌な気分になっちゃうかもだし、色々考えなくちゃいけないかなって……」
【まさか】
【君は君が思ってるほど、誰かに嫌われるような人ではない】
【まぁ、ヤスもわざと意地悪言うような奴じゃないし、ミリミリの絵を見たら多分感動してベタ褒めしてくると思うよ(★ ̄∀ ̄★)】
「気に入ってくれるかなぁ」
【大丈夫大丈夫。ミリミリの作品は、実は俺は前も見た事があるんだ。ヤスならきっと気に入るさ】
「……ありがとうございます。魔術は芸術なんですよね」
【Σ(°◇°;) 意味不明な事言ってごめんネ!自分でも何言ってんだ俺って思ったよ(>△<Uu一緒にすんなって怒っても良いよ!】
「怒りませんよー」
【でも、ミリミリの作品を改めて見たら違うって思うかもなぁ。俺の言う事はあんまり真に受けちゃ駄目だよヾ(´▽`;)・・本音言うと俺にはよく分かんないからね、魔術なんて】
「いえ、わたしも魔術は芸術だと思います。お仲間!」
【ありがとう(・v・*)】
「あ、つきましたよ。この村です」

 少女は笑って、前を指差した。
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