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5gの寵愛
「姫よ! 姫だわ! 姫のお通りよ! キャハ、どうしたのそんな辛気臭い顔しちゃって。姫には分かるわ、アナタ最近寝てないんでしょう? よっぽどショックだったのかしら? 姫から見ればたかだか愚民の一人や二人、この世界から消えてもどうって事ないのだけれどね。アナタも所詮は愚民だったって事ね。ほらほら、あんな奴の事なんて忘れて、紅茶でもいかがかしら? キャハ! どうしたのかしら? 飲まないのかしら? 姫が特別に淹れてやった紅茶に口をつけないなんて、無礼者だわ死刑死刑! もしかして、姫が直前に入れた粉末が気になるの? そこに気付くなんて、アナタ疲れた顔をしているくせに目ざといのね。そうよ、そもそもこの紅茶はアタシがアナタを殺すために淹れたものなのよ。あの口だけ達者の医者もどきが、姫を暗殺するために押し付けてきた大量の薬をこの紅茶に淹れてあげたの。別に、死刑ではないわ。これは、アナタが死んだほうが楽なんじゃないかってふと思った、姫なりの気遣いよ。だからアナタは姫に感謝すべきなのよ。キャハ! 殺すといっても、勘違いしちゃいけないわ。ここでアナタが死んでも、アナタはホントに死ぬわけじゃないのよ。そうね、気付いていないかもしれないから教えてあげる。この世界は、実はアナタの見ている夢なの。アナタじゃなくてアタシかもしれないわ。とにかく、夢なのよ。所詮夢でしかないのよ。夢よ、夢、全部夢! ホントのアタシ達は、嫌な事など一つも起こらない楽園ですやすやと幸せそうに寝息をたてているのよ。そこではアナタの大切なお友達とやらは死んでいないかもしれないし、そもそもアナタの大切なお友達とやらなんて最初から存在していないかもしれないわ。けれど、ねぇ、大丈夫。目が覚めたら、ここで起きた事なんてすぐに忘れちゃうわ。アナタが今悲しんでいる事も辛い事も泣きたい事もよく眠れていない事も、全部全部なかった事になるのよ! なんて素敵なのかしら! だから、アナタがそんな顔をする必要なんて、ホントはそんなにないんじゃないかしらって、姫は思うんだけれど、どうかしら? ほら、早く紅茶を飲んで。飲めばきっと死んで、目が覚めるはずなのよ! 悲しみのない、幸福だけの世界がそこにはあるの! ……要らないの? 姫の気遣いを無下にするなんて、やっぱりアナタ死刑だわ。全く、そんなにこのつまらない悪夢の中がお気に入りなのかしら。変わった子ね。……あら、この紅茶美味しいわ。姫ったら、お茶を淹れるのも上手いのね。キャハ!」
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